夕暮れの浜辺に、人の気配がぎゅっと集まっていた。
敷物の上に腰をおろし、団扇の風を仰ぎながら、誰もが同じ空を見上げている。提灯の明かりが灯ると、ざわめきはひときわ柔らかくなり、夏の終わりを告げる合図のように思えた。
やがて、海には火を抱いた小舟が浮かぶ。精霊船。
初盆を迎える家が、故人の魂を送り出すために捧げる炎。燃えさかるその光は、どこか切なく、しかし凛として海面を照らしていた。炎のゆらぎに、ひとりひとりの思い出が重なる。
夜が深まると、無数の燈籠が水面に流れ、赤い光の群れが静かに広がっていった。まるで海そのものが、誰かをやさしく抱きしめているかのように。
そして最後に、大輪の花火。
夜空に広がる光と音に、人々の歓声が一斉にあがる。その一瞬、哀しみも喜びも、同じ場所に溶けあっていた。
祭りのあと、潮風の中にふっと秋の気配が混じった。
もうすぐ、蝉の声が遠のき、虫の音が近づいてくる。
夏の余韻を胸にしまいながら、帰り道を歩く背中に、少し涼やかな風が吹いていた。
海に還る灯り ―夏の終わりのお盆行事―
