川べりの紅葉が、火のように枝先へ広がっていた。
まだ夏の名残を抱えたような緑がところどころに混じり、移ろいの途中で足を止めている葉もある。その曖昧さが、むしろ季節の息づかいを静かに伝えてくる。
水面は、風の手にそっと撫でられて、さざめきながら流れていく。

ときどき落ち葉がひとつ、ふたつ。音もたてずに旅に出る。
どこへ向かうのかを知らないまま、ただ流れに身をゆだねる様子が、ふいに胸の奥をゆるめていく。
古い社の屋根に、小さな銀杏の葉が散っていた。
人の気配が薄い場所ほど、季節は遠慮なく姿を見せるものだ。

木々の色づきや、風向きの変化が、境内の静けさと重なり、時間がゆっくりほどけていくようだった。
この季節、何かをはっきり決めなくてもいいような気がする。
紅と緑のあいだで揺れる葉のように、気持ちの半分がまだどこかに留まっていたとしても、それはそれで悪くない。
変わりゆくものと、変わらずそこにあるもの。

そのどちらの気配も、しずかな川の音とともに寄り添ってくれていた。
今日見た景色が、心のどこかにそっと残り、ふとしたときに思い出のように立ち上がる。
そんな秋の日のひとこま。
