波が静かに寄せては返す。
足元には丸みを帯びた石が、雨粒のように散らばっている。
拾い上げると、手のひらにすっと馴染む。
冷たさの奥に、何万年という時間がひそんでいて、ただの石ころに見えても、光の角度によっては翡翠色がふっと現れる。
雲が厚く垂れ込める海辺で、ふたり並んでしゃがみ込み、黙々と石を探す。
会話は少なくても、不思議と心は寄り添っていて、見つけた小さな緑の輝きに、同じように目を細める。
翡翠海岸の石は、持ち帰ればただの石になるかもしれない。
けれど、探している時間そのものが、ひとつの宝物になる。
潮風に髪を揺らしながら、ポケットにそっと忍ばせた石の重みを感じていた。
その重みは、波の音と一緒に、いつまでも胸の奥に残っていくようだった。