海の青さが、どこか硬質に見える季節がある。
冬の光をまとった波は、夏のように無邪気にはしゃぐのではなく、ひとつひとつ、言葉をえらぶように寄せては返す。

打ち寄せる白さの向こうで、消波ブロックが淡く光り、山の影が長く砂浜を包みこむ。
冷たい風の中に立つと、耳の奥で、冬だけが知っている静けさがひらいていく。

浜には、誰かの足跡が淡く残っていた。
ついさっきまで人がいた気配が、波に触れられてゆっくり薄くなっていく。
日が傾くと、海面の光は少し鈍り、砂の上を流れる泡の縁だけがかすかに明るい。

歩くたび、冬の海に話しかけられているような気がした。
――今日はどんな一日だったのか、と。
雪の積もった線路は、まっすぐに遠くを指していた。
列車の来ない時間帯の踏切には、あたたかさも寂しさもなく、ただ冬の空気だけが澄んでいる。
青空と雲の境目で、風がそっと色を混ぜあっている。

どこへ向かうでもない線路を眺めていると、心の中の余白がふくらむ。
今すぐ答えを出す必要のないことたちが、雪に守られたように静かに横たわる。
冬の風景は、いつも少しだけ、もの言いたげだ。
けれど決して押しつけず、ただ寄り添うようにそばにいる。

波の音も、雪の白さも、踏切の鉄の冷たさも、
きょうの自分をそっと映し返す鏡のようで、
歩いているあいだじゅう、どこかやさしい。
そんな季節の一場面を、ただ受け取った日のことだ。
