山門へ続く石段に
灯りがひとつ、ふたつ。
瓶の中で揺れる小さな炎が
夜の風にささやきながら
列をなし、道を導いていた。
足元の暗がりに
ろうそくの橙が寄り添うと
そこだけ時の流れが緩むようで
子どもの姿も、影絵のように
静かに浮かびあがる。
境内に広がるのは
和傘と無数の灯りの波。
色とりどりの傘は、まるで
夜空から舞い降りた花のようで
火の粒が川の流れとなり
仏像の足元へと寄り添っていく。
光と影のあわいに立つと
心の奥に積もったざわめきが
少しずつほどけていく気がした。
誰のためでもなく
ただ、そこに在る灯り。
それに照らされる夜は
言葉よりも静かで、豊かだった。