7月中旬、夏の入り口で見た夕暮れ

風景

夕暮れの海辺で、夏がほどけていく

七月のなかば。
夏休みを前にした空気は、どこかそわそわしていて、
胸の奥でもなにかがふくらんでいく。

日中の強い光がようやくやわらぎ、
夕方の風はすこし優しくなって、頬にふれていった。

遠くから、子どもたちの笑い声。
その音に押されるように、ふらりと海辺へ。

この時期の夕暮れは、どうしてこんなにも胸に沁みるのだろう。

空には、梅雨の名残のような雲がもくもくと浮かび、
そのすき間を縫うように、夕陽がしずかに沈んでいく。

山の稜線は影絵のように黒く、
こぼれた光が空を金色に染めていった。

堤防に立ち、その光景をただ見ていると、
どこか別の時間に迷いこんだような気持ちになる。

夕暮れの海

水面にゆらめく夕陽。
町並みも、すこしずつオレンジ色に。

隣には娘がいて、黙ったまま空を見上げていた。

風に揺れる髪。
やわらかな光に包まれた横顔。
それを見ているだけで、胸の奥があたたかくなった。

「夏って、やっぱりいいね」

ふいにこぼれたひと言は、風の音みたいに自然で、
でも心にしっかりと残った。

そうだな、と小さくうなずきながら、
子どものころの自分を思い出していた。

きっとあの頃の私も、こんな夕暮れを眺めていたはず。
そして、夏休みを楽しみにしていたはずだ。

夕焼けの帰り道

七月の夕暮れは、胸に静かに火を灯す時間。

希望と、ほんの少しの切なさ。
これから始まる夏のまぶしさが、風や光にまぎれて流れ込んでくる。

またいつか、こんな景色に出会えたら。
そう願いながら、ゆっくりと家路についた。

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