の日は、蒸し暑さが残る午後。
「涼しいところに行きたいね」と子どもと話して、選んだのは水族館だった。
扉をくぐると、ひんやりとした空気。
肌にあたる冷気が心地よくて、ふたりで「涼しいね」と顔を見合わせた。
水槽の中では、小さな魚たちが群れになって泳いでいる。
一匹はほんの少しの大きさなのに、くるんとした目でこちらを見ているようで。
思わず笑みがこぼれた。
別の水槽には、厚い皮膚にくすんだ色をしたウツボ。
ひょっこり顔を出していて、子どもは少し驚いた顔をしながら、
「なんかこわいけど…でも、かわいいかも」とぽつり。
その小さな心の揺れに、そばで見ている私まであたたかい気持ちになった。
そして最後に出会ったのが、まんまるのハリセンボン。
「トゲトゲしてる!でも、おめめがかわいい」
そう言いながら、水槽の前にぺたりと座り込み、じっと見つめていた。
水族館は、ただ魚を“見る”場所ではなくて。
子どもにとっては、出会いと発見と驚きがつまった、小さな冒険の場所なのだとあらためて思った。
静かな館内にひびく水音。
青く揺れる影。
時間さえもゆっくりと流れていくようで、心まで涼しくなった。
大きなイベントがなくてもいい。
こうして一緒に過ごす時間が、きっと宝物のように残っていく。
帰り道、「また行きたいね」と小さな声。
うん、また行こう。あのトゲトゲの子にも会いに。