朝もやの白馬。
川面から立ちのぼる白い気配のなかで、カラフルな気球がゆっくりと浮かび上がっていく。
遠くの山肌には、まだ眠たげな影が残り、谷を渡る風が冷たく頬をなでていった。
気球の色は、霧の灰色の世界にぽっと灯った小さな灯りのようだった。
浮かんでいくその姿を見ていると、心の奥にしまいこんでいた幼い頃の夢や憧れが、ふっと呼び覚まされる。
川を流れる水音、山にしみ込む朝の静けさ。
そこに人の営みが混ざり合って、まるで一枚の風景画の中に立っているような気持ちになる。
ただ眺めているだけで、胸の奥がやさしくほどけていく。
白馬の早朝は、そんな時間をそっと差し出してくれる。