夕暮れの梅田駅前は、雨上がりの匂いを含んでいた。
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アスファルトに残る水たまりが、まだ青さを残す空を映して揺れている。そこにネオンの光が落ちると、街全体がにじんだ色で塗り重ねられたみたいに見える。湿った空気の中を吹き抜ける風は少しひんやりして、夏から秋へと季節が移ろっていく気配を含んでいる。
大屋根の下を抜ける人々の靴音は、雨で洗われた石畳に小さく響いて、どこか軽やかだ。タクシーの窓ガラスには水滴が残り、信号待ちの光にきらりと光る。
ふと立ち止まって見上げれば、群青色に沈んでいく空の中でビルの明かりがひとつ、またひとつと灯る。その光が雨粒に反射して、駅前全体が柔らかな星座のように瞬いていた。
冷たい空気と、少し湿った匂い。
その中に立っていると、今日一日のざわめきがやさしくほどけていくように感じられた。