雲が厚く垂れ込めて、空と海の境目がゆるやかに溶けあっていた。
その中で、雨のすじが遠くの景色をひと筆で描いたように浮かびあがらせる。
天の橋立の松並木が、雨粒に洗われて輪郭を取り戻す。
夏の名残りを抱いた海風と、秋の気配をまとった雨とが、同じ場所で出会っていた。
水面にひろがるさざ波は、季節の境目に立ち尽くすこちらの心を映すようで、
はっきりしないものほど、美しく見えることがあるのだと思わされた。
しばし雨ににじむ景色を眺めながら、
夏と秋、そのはざまのひとときを味わっていた。