去年の夏、子どもの筆先から広がっていった色は、少しずつお地蔵さまに息を吹き込んでいった。
あのときの集中した横顔や、新聞紙に落ちた色のしみまでもが、いまも鮮やかに思い出せる。
そして今年。
また同じように、白い仏さまの前に小さな手が伸びるのだろう。
どんな色を選ぶのか、どんな表情になるのかは誰にもわからない。けれど、その過程そのものがもう、夏の記憶になりはじめている気がする。
少子化という時代の流れのなかで、ひとりの子がたっぷりと時間を持ち、お地蔵さまに向き合えること。
その静けさを思うと、ただ淡々と過ぎていく日々の中で、ぽつりと灯る小さな行事の尊さを感じる。

rbt
静かに、それを待っている。