昼間の熱気をまとったまま、海がゆるやかに色を変えていく。
西の空に沈む太陽が、水面に黄金の道を描き、波がゆらゆらと揺らすたびに、きらめきは砕けては生まれる。
桟橋に腰かける人影の向こうを、帆船が静かに佇んでいた。
その姿は、どこか時間の流れから切り離されたようで、見ているこちらの呼吸までゆるやかになる。
海鳥が一羽、浅瀬を歩いていた。
その足もとを夕映えが染めて、影は細長く伸びていく。
日中の酷暑が嘘のように、風が頬を撫でる。
ほんの少しだけ、秋の気配が混じっている。
季節がゆっくりと移ろう、その境目を見届けるのは、なんだか特別な贈り物のように思えた。