海の町の昼は、いつも潮の香りがする。
宮津の港に近い店で、海鮮丼を頼んだ。

青磁のような器に、淡い光をまとった魚たちが並んでいる。
イカの白、ハマチの桃色、ウニの金色。
上には、細く切られた海苔が、波の影のように散らされていた。
ひとくち目で、海が舌に戻ってくる。
潮風と陽ざしと、網の軋む音。
そんなものがいっしょくたになって、ひとすくいのごはんに宿っていた。

旅の途中の食事というのは、不思議なものだ。
腹を満たすだけでなく、土地の呼吸をひととき自分の中に迎え入れるような感覚がある。
外ではカモメが鳴き、観光船のエンジン音が遠くに響いていた。
店の奥からは、誰かの笑い声。
その音を聞きながら、ふと、海にほどけていくような気持ちになった。

