夜祭の灯りに、きらきらがこぼれる
薄明かりの路地を抜けた先、ふわっと鼻をくすぐる甘い風。
リンゴ飴の香り、どこかで聞こえる金魚の水音、さらりと揺れる浴衣の裾。
それだけで、胸の奥がわくわくしてくる。
夏の夜祭。
それは、小さな手のひらにそっと夢をのせるような、きらきらした時間。
「どれにしようかな?」の時間が、いちばん楽しい
まず足を止めたのは、ヨーヨーすくいの屋台。
色とりどりの風船が、水の中をころころ揺れている。
アンパンマン、プリキュア、すいか模様……目がいくつあっても足りないほど。
娘はというと、真剣なまなざしでポイを水に浮かべて。
慎重に、でも嬉しそうに手を動かすその姿は、まるで宝探しの探検家。
選ぶときの表情も、引き上げた瞬間の歓声も――
ぜんぶが、今日という日の宝物になる。
金魚は、すくえなくても、楽しい。
少し離れたところには、金魚すくいの屋台。
赤や白、オレンジ色の小さな命が、水の中をくるくる舞っている。
ただ見ているだけで、癒されるような、静かな美しさ。
「いっぱいすくう!」と張り切る子どもたち。
でも、ポイが破れても、すくえなくても、全然平気みたいで。
水をぴちゃぴちゃと触って、笑うその横顔が、
まるで“夏そのもの”のように輝いて見えた。
「すくえなかったけど、楽しかった」
そんな言葉に、胸がふっとあたたかくなる。
夜の灯りに浮かぶ、色とりどりの世界
最後は、おもちゃ金魚すくい。
プラスチックのカラフルな魚たちが、水槽の中で光にきらめいている。
娘は赤いボウルに入った小さな戦利品を、何度も何度も見つめて。
「いっぱいとれた!」と満面の笑み。
その笑顔を見た瞬間、
ああ、連れてきてよかったなと、しみじみ思った。
夏祭りって、派手でもないし、特別便利なものでもない。
だけど、人の声や夜の空気、浴衣のすそ、
手の中のヨーヨー――
そのどれもが、日々の暮らしをふわりと彩ってくれる。
まるで、ちいさな魔法みたい。
来年も、再来年も、
きっとまたここに来よう。
そんなふうに思わせてくれる、
かけがえのない一夜でした。