鳥居をくぐるとき、胸の奥がすっと透きとおるような感覚になる。
まぶしい夏の光に磨かれた木の肌は、まだ新しいのにどこか懐かしい。
五十鈴川の水は、指先に触れただけで涼しさが骨まで沁みわたる。
石の上で跳ねる光は、川の言葉のようにきらきらと揺れていて、
その一粒ごとに、長い時の流れを感じる。
小さな手が大木に重なる。
幹に掌をあてると、ひんやりとした樹の呼吸が伝わってきて、
人よりもずっと長い命がそこにあることを思い出す。
清められるのは身体より、むしろ心のほうかもしれない。
流れに洗われ、樹に寄り添い、いつしか余分なものが削ぎ落とされていく。
帰り道には、空の青さがひときわ深く見える。
伊勢の風が、少し軽やかな自分を連れて帰ってくれるような気がした。