ゆっくりと首をのばす時間 ― 京都動物園の午後

京都動物園に行った日のことを、少し思い出してみる。

曇り空の下、平安神宮の大鳥居をくぐるあたりで、ほんのり冷たい風が頬に触れた。朱の色は曇りの日のほうが深く見える気がする。光の中では鮮やかに、影の中では静かに、季節を映すように色を変える。

平安神宮

動物園までの道すがら、子どもたちの声が遠くから響いてきた。どんな小さな声でも、笑い声はまっすぐに届く。門をくぐると、芝生の上を歩く家族の姿。少し手を引く速度を合わせながら、話すでもなく、ただ一緒に歩く。そんな時間がいちばん穏やかだと思う。

京都動物園

キリンの首が、ゆっくりと風を切って揺れていた。あの穏やかな目には、どんな風景が映っているのだろう。私たちよりずっと高いところから、たぶん人の流れや空の色を見ている。

京都動物園 キリン

帰り道、五重塔の屋根が夕陽を受けて金色に輝いていた。日が沈むたびに、この街の古い影と新しい息づかいが、静かに混ざり合っていく。

五重塔

京都動物園の一日は、観光の記録ではなく、心のやわらかい場所をそっと撫でていくような時間だった。

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