これいいの

波に揺れる光の中に、過ぎ去った時間の温もりがよみがえる。海にほどけた声や笑いが、今も静かに胸をあたためてくれる。

海とともに生きる町、伊根。舟屋の暗がりからのぞく青い海、港に並ぶ家並み、路地に残る暮らしの気配。歩くたびに、海と人の時間が重なり合う風景に出会う。

海と空のあわいを縫うように伸びる天橋立。自転車で走りながら出会う光の移ろい、松のざわめき、潮の香り。その道のりに広がる自然の表情を、ゆるやかに綴るエッセイ。

川辺に響く虫の声、ゆらめく光と風。夏の名残と秋の気配が静かに交わる瞬間を描いた、小さな季節のエッセイ。

石の階段を夢中で駆け上がる子どもたち。息を切らしながらたどり着いた先には、雲が広がる空と、心がほどけるひとときが待っていた。

満ちゆく月と静かな教会が並ぶ夜。石造りの壁に映る光と影に、言葉にならない祈りがにじむ――心に余白を残すエッセイ。

補助輪つきの自転車で、ふらふらと道を進む子どもの背中。その姿に映るのは、小さな冒険の始まりと、自由へ向かう確かな一歩。

地蔵盆が終わり、町に戻る静けさ。秋を迎える準備の気配と、なお続く夏の暑さの狭間で感じる日々を綴りました。虫の音や風の変化に、移ろう季節をそっと探ります。